2009年10月27日
書評
私事ですが、上の本『地域をはぐくむネットワーク』(2007、岡田真美子編著、昭和堂)には、こっきが院生の時「地域自治」はいかにすれば成り立つかを研究していたときに、書かせていただいた論文が一章載っています。この書にはこれから地域づくりを行っていこうとする一般のかた向けに平易な言葉で、そのヒントがいっぱいつまっています。
私の章の題名は「契約講と地域自治」。契約講とは主に東北地方に近代以前から残る住民自治組織です。今で言うと自治会に当たるでしょう。この契約講を通して現代に通じる地域自治のありようを探ろうとしたのです。
私の研究の核心は地域自治は共同体の中にあり、共同体は「仲間」という関係によって成り立っていることを言ったことにあります。そして、「仲間」には仲間内にだけ通用する「掟」(法律などのhard lawに対してsoft lawと位置付けられる)があること。これが秩序を生み、共同体によって社会性や倫理観が育まれていきます。
先日、ネットの検索をしていたら、この本の書評があるのを発見しました(クリック)。それも多くの執筆者がいる中で私が書いた論文について書かれていました。概ね、私が言いたかったことを的確にとらえてくださり、肯定的な論調だったように思います。
ただ、私が「仲間」関係形成のためにすすめるコミュニティ・ビジネスについて、評者は企業の経済競争に巻き込まれた崩壊するのでは、という見解を示されていましたが、私はそのような企業が入り込めない(成り立たない)ところにきめ細かなコミュニティ・ビジネスが存在するのだと考えます。
この論文の他に、契約講では「謡」がうたわれるのですが、謡が「仲間」という関係=共同体を強化する役目をなしたことを論じた論文があります(「共同体形成における謡の効用‐長尾契約講の事例から」『日本感性工学会論文誌 Vol.8 No.3』、2009)。
別刷りがまだ若干残っていますので、興味ある方はご連絡を。
こ
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